「ぽっくり死と長寿」その2

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左はこのシリーズ1号に掲載、約10年前のもの:: 右は現在、2号に掲載

松岡正己

<前口上>


現在の写真を原稿と一緒に提出したはずですが、掲載されていたのは当クラブの開設当時のクラブに提出した私の若かりしときのものです。クラブは時の経過と共に樹木も茂り、風格が出てきますが、人間の方は皺も増え、髪の毛も少なくなります。今回の写真は現在のものです。次回にも掲載OKなら、さて、どんな写真になるのでしょうか。

<過去の寿命>


過去10万年間位は人類の平均寿命は20歳前後と推定されています。石器時代は15歳ぐらい、日本の縄文時代の骨の研究から平均寿命は14,6歳だったということです。江戸時代のお寺の過去帳から、平均寿命は30歳前後と推定されています。 この時代で興味あるのは、身分が寿命に関係していたことです。庶民より武士が、武士の中でも石高の高い武士層がより長生きしていました。 明治時代になりやっと平均寿命が40歳を越しました。明治25年では、男42,8歳、女44,3歳、やはり大昔から女の方が男より長生きでした。どうして女性の方が長生きなんでしょうか。昭和10年でもこれより平均寿命はあまり伸びていません。これは結核による死亡が多かったからでしょう。平均寿命が50歳を越すのは戦後です。
   昭和22年では男50,1歳、女53,9歳。この頃から平均寿命は著しくのびて昭和30年には、60歳を越しました。経済成長と共に平均寿命も伸びてきたことが伺えます。
 昭和46年には70歳代に突入、男70,2歳、女75,6歳となり、世界の長寿国の仲間入りを果たしました。スウエーデンが100年掛かったところを日本は30年で急速に高齢化社会に入りました。この平均寿命の著しい延びの原因は、医学の進歩と環境衛生の改善により子供の死亡率が非常に減少したことが上げられます。

<何が長寿をもたらしたか>


平均寿命は社会の構造や文化と密接に関連します。平均寿命世界一の日本は、動物性食品と脂肪の摂取量は一番少ないが、動物性脂肪摂取量では世界一のスイスは平均寿命では世界第2位です。オリーブ油の摂取量の多いギリシャは平均寿命では第3位です。ドイツと日本の約2倍の医療費を使う米国の平均寿命は20位です。ギリシャは米国の医療費の10分の1しか使っておりません。 ことほどさように、長寿の要因を決めるのは難しいようですが、世界の長寿国には3つの共通パターンがあります。 (1)食事の栄養が完全である、、(2)食事が豊富である、、(3)誰にでも食べものが行き届いている。 長寿というのは、複雑に入り組んだ社会を作る機構の最終結果であり、それは安定した民主主義社会が努力して生み出したものと言えます。そういう意味では日本は理想的な国作りをしてきたと言えましょう。

<寿命は何処まで延びるか>


ゴロの良さから鶴は千年、亀は万年とか言いますが、哺乳動物でみると体重の大きい動物ほど長生きです。体内の発熱反応で体温を一定に保っていますが、大型動物の方が体重あたりの表面積が小さいので、エネルギーの消耗度が少なくすむためです。 寿命と密接に関係するのが、脳の重さです。脳の小さいネズミ(約3年)などは短命ですが、脳の重い動物ほど寿命は長いのですが(象で約80年)、この脳の重量と寿命は相関関係にあり、人間はこの理論上の直線よりかなり上に飛び離れています。それは ヒトが数百万年前にサルから分離したあと、寒さや肉食猛獣から身を守るための衣服や武器や住居を考え出し、調理や暖房に火を使い、自らの飼育条件を整えてきてからです。 自然界の動物でも、その動物に適した環境を作ってやるとぐーんと寿命は延びます。 犬の寿命はだいたい10歳から15歳ぐらいと考えられていますが、私の家の室内(冷暖房完備?栄養満点)で飼った小型犬で一番長く生きた犬は17歳でした。人間で言うと100歳ぐらい。でもドッグフード研究所では、より完全な環境で飼育すると25歳までは生きるそうです。人間で言うと150歳に相当します。 それでは、人間も環境がよければ150歳まで生きれるのでしょうか。

<最長寿命>


オールドパーというウイスキーの商標になったトーマス・パーは1483年から1635年まで152年間も生きたということです。しかし、この長寿記録には確証がありません。世界の長寿地域とされるエクアドルやコーカサス地方には140歳を過ぎても元気で働いていると言われてますが、その戸籍上の記録には信頼性が乏しく伝説に過ぎないとも言われています。 1986年に亡くなった奄美大島の泉重千代さんは享年120歳でしたが、戸籍の詳しい調査では誤りがあり、実際には110歳台だったろうとされています。世界で正確な記録上120歳を越して生存した例は今のところありません。人間の限界寿命は120歳ぐらいというところでしょうか。

<三大死因を克服すれば>


日本人の三大死亡原因はガン、脳卒中、心筋梗塞です。統計処理でシュミレイションすると、ガンを克服したとして平均寿命は3.13年延び、脳卒中を克服できれば2,13年、心臓病を制圧したとして1,93年、感染症がなくなったとして1,7年、交通事故死が無くなったとしても8ヶ月しか、平均寿命は伸びません。どんなに医学が進歩しても、食料が豊かになり文明が進歩しても、平均寿命が90歳を越すことは無理なようです。

<昔は長命、今は短命>

男子の平均寿命が43歳の明治時代に、相撲の力士の平均寿命は56歳でした。この時代には力士は長生きでした。現代の力士の平均寿命は50歳の後半。人生80年時代の現代に於ける50歳代というと大変短命の部類に属します。入門時に70kg前後の若者が約3年後には体重が倍になることも珍しくない現代の相撲社会です。急激な大型化のためのカロリー過多の食生活が原因です。コレステロールは400(200前後が正常)を越え、尿酸値は10(正常値は7まで)を越え当然痛風で関節を痛めます。明治時代の力士は身長170cm、体重100kgが平均的でした(現在の舞の海がこれぐらいです)。現代から、見れば粗食といえるような物を食べての鍛錬での100kgだから強靱な理想的な体型でした。大型化の現代の相撲の世界では、力士で100kgでは勝負にならない。それだけ現代の力士は大型化と引き替えに命を削っていることになります。

<職業と寿命>


相撲の力士のような特殊な職業は別にして、一般的には職業と寿命との関連は調査が難しくて、確たる話がありません。人は一生のうちで、結構職業が変わります。その点医学部や医科大学の卒業生は、ほとんど一生医師という職業に就きます。こういうのは医師だけのようです。商船大学の卒業生は結構船乗り以外の他の職業について居られます。 全国の医学部医科大学の卒業生名簿を経年で調査した研究があります。それによると大学を卒業して、同級生が半分になるのは卒業後50年だそうです。24歳で卒業するとして74歳ぐらいでは仲間が半分になるわけです。 これが他の職業と比べてうんぬんするデーターがありません。私が風邪でも引くと患者さんは「先生でも風邪引くのですか」と聞きます。医師だけが特別の治療法があるように思うようですね。寿命にからむ仕事に従事するからといって、医師がとくに長生きするわけではありませんよね。私などはストレスが大変大きい職業だから、医師はかえって短命ではないかと思いますが、これも確たるデーターがありません。でもストレスはその人の寿命に関係するようです。
(つづく)

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